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  チェーホフによせて詠む   アントン・パヴロヴィチ

詠み人 大建雄志郎(大10)

わが書架のチェホフ全集欠巻在り露都(モスコー)勤め挟む年月

赴任して駆けつけたるはサドーバヤ通りチェホフ住みたる短形の小館

露語鍛錬と一途通ひし芸術座かもめマークの緞帳なつかし

削ぎ落とし筋骨のみなるチェーホフの散文の簡 短歌に通ず

目の前に皿ひとつあれば短編三つ紡ぎ出すとふ想像力はも

メリホボにヤルタに住み跡訪ひゆきてひとつ名想ふをチェホフ好きと言う

『医は本妻文学は愛人』いつしらに倒錯しつつ残れる往診鞄(カバン)

ゴーリキーの除籍に抗議しロシアアカデミー退任したり人間チェホフ

幼き日共に店番(バイト)せし友の遺児()に学資残せるチェーホフの遺書

善良で教養ありと日本人の印象記せりシベリア日記に

ロシア(びと)も心やさしくなると言ふアントン・パヴロヴィチその名聞くとき

二〇一〇 チェフフ生誕百五十年チェーホフ好きはひとり祝はむ


 
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